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2022年02月27日

したくなかった検索 「犀の角をもとめて」2 <泉小太郎伝説の実際(27)>

田沢神明宮の繁栄が続いていたのなら
「ひかるくん」の伝承は残っていたはずで
それをみた信府統記作家も参照したに違いなく
もっと華々しい終わり方であったはずです。

そうなんです。「ひかるくん」の築いた田沢の地はその後繁栄しなかったのです。


先ほど、田沢神明宮に伝えられている繁栄の記録を紹介しました。
実は誤りがあります。というより故意に書かなかった言葉があります。

それは、どの繁栄の記録にも、「上古では」とか「昔は」という接頭語がつけられているのです。
江戸時代には田沢神明宮は廃れており、今もウィキペディアはもちろん、グーグルマップにすら載っていません。
(ただし2022年現在はUPされています)


なぜか。それも縁起には記載されています。

①分社して、各村々で祀るようになったため、田沢村一村のみの氏神となったから
②文禄年間に川の氾濫により田沢の地が分割減少してしまったから
③田沢神明宮縁起では、円満寺(犀の矛を祀った場所にできた寺)という寺が併設されるが、
   その円満寺も、天文年間(例の犀の石破りの時と同じ天文年間)悪徒のために焼失、
   古伝の書巻も宝物も失った。氏子も離散しており復旧しようとしたが修補の力もなくなったから
   とあります。

豊科町誌は、川会神社という川に流された神社を例にだし
この地は川の増水氾濫のため、民の生活は脅かされていたと触れています。

確かにそうかもしません。ただ、治水の天才、「ひかるくん」の治めた地です。
僕の中ではこの説明に釈然としないのです。

だったら、なぜ洪水を防げなかったのか?自然にはやっぱり勝てなかったのか。(無理もないか)
あとは、悪徒が、起こした火事でもう復旧できないなんて。
しかも、悪徒(僕は江戸時代の盗賊だとおもっていました)は
僕の大事な犀の角まで持って逃げたのです。この時僕はふと気が付きました。

まてよ?でも、この悪徒の後をたどれば、犀の角を発見できるのでは?
悪徒が火事を起こしたとされる天文年間をしらべはじめました。

歴史に詳しい人ならこのあと何がおこったか
もちろんわかっていると思うのですが
次の検索は「天文年間」についてです。



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Posted by 泉小太郎研究家 at 17:47Comments(0)泉小太郎伝説の実際

2022年02月27日

したくなかった検索 「犀の角をもとめて」1<泉小太郎伝説の実際(26)>


僕はハッピーエンドが好きです。
ですから、この泉小太郎(たつのこたろう)伝説に関しても、
前章にのべたような田沢神明宮の縁起にあるとおり
村里が繁栄し、祭りには犀川と光城山に火を灯して
泉小太郎を祀るという幸せな情景の締めくくりに大満足したかったのです。
 
間違うことがないように言うと、泉小太郎である「ひかるくん」の物語は間違いなくハッピーエンドです。
本当に彼のおかげで安曇野の地は繁栄しました。
この地の開祖であるのも間違いありません。
もちろんきっかけは仁科濫觴記によれば
「仁品王」であり「九頭子」であり「保高見熱躬」でしたが、
常に民とともにあった「ひかるくん」は人々にも好かれ、
その偉業はたとえ「ひかる」の名が忘れ去られたとしても泉小太郎伝説となり、今の世にも伝えられるくらいです。

 でも。です。
 でも、それならばなぜ、「ひかる」の名は忘れ去られ、
泉小太郎伝説の終わりかたはあんなにも物悲しいものになってしまったのでしょう。
「堤を破って日本海に消えていく」という民話であったり
信府統記では「仏崎に身を隠す」などの情景が描かれるのです。


はっきり言って古代でこれだけのことをしたら、
もっと華々しい終わり方か、すくなくとも喜びにあるれる民の笑顔でおわってもいいはずです。

もちろん、簡単な理由ならあげられます。
仁科宗一郎氏も述べているように「ひかるくん」つまり白水郎日光の名は、
仁科濫觴記には治水終了後一切出てこなくなるのです。
ですから、元ネタの仁科濫觴記をみてつくられた信府統記などの伝説では
泉小太郎がフェイドアウトするような印象の文章となる。
 これは、正しい。でも。

でも、もし、そうであっても田沢神明宮の繁栄が続いていたら、
「ひかるくん」の伝承は残っており、それをみた信府統記作家も参照したに違いなく、
もっと華々しい終わり方であったはずです。

なぜこのような物悲しい物語になってしまったのでしょうか?


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Posted by 泉小太郎研究家 at 08:47Comments(0)泉小太郎伝説の実際